パートやアルバイトで働いていると、どうしても気になるのが「年収130万円の壁」ではないでしょうか。
年末が近づくと「今年はあといくらまで働けるんだろう」と計算したり、シフトを減らしてもらったり。
でも繁忙期や人手不足のときは、そう都合よく休めませんよね。
「今月は働きすぎたかも……」と不安になりながら出勤している方も、多いと思います。
実は私も、夫の社会保険の扶養内で働くアラフィフ看護師です。
2024年に年収130万円を超えてしまい、「事業主の証明による被扶養者認定の円滑化」という制度を実際に使いました。
調べてみると、この制度は「一時的に130万円を超えただけなら、扶養に入り続けられる」というものでした。
知らずに働く時間を削ってしまうのは、もったいないですよね。
この記事では、その制度のしくみと使える条件を、できるだけかんたんにまとめています。
さらに2026年4月から扶養の判定方法そのものが変わったので、最新の内容もあわせて解説しますね。
※この記事は2026年8月に最新の制度内容へ更新しています。
年収130万円を超えると出てくる問題
「130万円を超えると扶養から外れる」とよく言われますが、実際には何が起きるのでしょうか。
夫の社会保険の扶養から外れると、自分で健康保険料や国民年金保険料を払うことになります。
つまり、頑張って働いて収入を増やしたのに、手取りはかえって減ってしまうということ。
これでは、なんのために働いたのか分からなくなってしまいますよね。
だから多くの人が、年末が近づくとシフトを減らしたりお休みをもらったりして、働く時間を調整しています。
私自身も、職場にお願いして勤務を調整してもらったことがあります。
でもこれ、職場の側からすると困った話でもあるんです。
繁忙期こそ人手が欲しいのに、スタッフがいっせいに勤務を減らしてしまうのですから。
足りない分は新しく人を雇わなくてはならず、職場の負担も増えていきます。
働きたい人が働けない。
人手が欲しい職場も困る。
どちらも損をしてしまうこの状況をなんとかしようと、国が動き出しました。
2026年4月から「契約書の年収」で判断されるようになりました
2026年4月1日から、社会保険の扶養に入れるかどうかの判定方法が変わりました。
これまでは「実際にいくら稼いだか」で見られていましたが、これからは労働条件通知書などの契約書に書かれた賃金から見込まれる年収で判断されます。
つまり「結果いくらになったか」ではなく、「契約上いくらになるはずか」を見るということです。
残業代はどう扱われるの?
ここが多くの方が気になるところだと思います。
厚生労働省の通知には、こう書かれています。
労働契約に明確な規定がなく労働契約段階では時間外労働の見込みがなかったのであれば、扶養認定時点で時間外労働が発生していたとしても、今回の取扱いにより年間収入を判定することとなります。
かんたんに言うと、契約書に書かれていない残業代は、年収の見込みに入れなくてよいということです。
繁忙期に残業が増えても、それだけで扶養から外れる心配はしなくてよくなりました。
ただし「残業代は全部セーフ」ではありませんので注意してください。
ここでいう「賃金」には諸手当や賞与(ボーナス)も含まれます。
契約書に書いてある手当やボーナスは、きちんと年収に入ります。
結果的に130万円を超えてしまったら?
思いがけない臨時収入で130万円を超えてしまった場合についても、通知に書かれています。
臨時収入によって結果的に年間収入が130万円以上となった場合であっても、当該臨時収入が社会通念上妥当である範囲に留まる場合には、これを理由として、被扶養者の認定を取り消す必要はありません。
常識の範囲であれば、超えてしまってもすぐに扶養から外されることはありません。
以前よりずいぶん働きやすくなりましたね。
ただし、これは抜け道ではありません。
同じ通知に、臨時収入をもらう前提で、契約書の賃金や労働時間をわざと低く書いていた場合は、認定を取り消すことがあるとも書かれています。
あくまで「正直に契約したうえで、結果的に超えてしまった」場合の話です。
この新しい方法が使えない人もいます
実はここが大事なところです。
次のような場合は、新しい方法では判定できません。
・契約期間が1年未満の場合
・シフト制で、勤務内容が契約書からはっきり読み取れない場合
・手当の額が契約書に明確に書かれていない場合
この場合は従来どおり、給与明細書や課税(非課税)証明書などで年収を判定することになります。
クリニックや病院のパート勤務はシフト制の方が多いと思います。
「新しい制度になったから安心」と思い込まず、まずは自分の労働条件通知書を確認してみてください。
必要になる書類
新しい方法で認定を受けるには、次の2つが必要です。
・労働契約の内容がわかる書類(労働条件通知書・雇用契約書・事業主の証明のいずれか)
・本人からの「給与収入のみである」という申立書
参考:日本年金機構 労働契約内容による年間収入での被扶養者の認定の取り扱いについて
厚生労働省の施策
ここからは、国がどんな対策をとってきたのかを見ていきます。
「働きたいのに、壁があるから働けない」という声を受けて、厚生労働省はいくつかの対応をしてきました。
そのひとつが、これからお話しする「年収の壁・支援強化パッケージ」です。
少し前の施策ですが、2026年8月現在も続いている大切な制度なので、ぜひ知っておいてください。
ここで、混乱しやすいポイントを整理しておきますね。
実は「扶養に入り続けるための仕組み」は2つあります。
| 2026年4月からの新しい判定 | 事業主の証明 | |
|---|---|---|
| 何で判断する? | 契約書に書かれた年収 | 一時的な収入増だったという証明 |
| いつ使う? | 扶養に入るとき・毎年の確認のとき | 130万円を超えてしまったとき |
| 回数の制限 | なし | 原則として連続2回まで |
| 向いている人 | 契約内容がはっきりしている人 | シフト制など契約が不明確な人 |
どちらか一方しか使えない、というものではありません。
契約書がはっきりしている方は新しい判定で、そうでない方は事業主の証明で、と考えると分かりやすいと思います。
年収の壁・支援強化パッケージ
2023年9月、厚生労働省からパート・アルバイトで働く方が『年収の壁』を意識せずに働ける環境づくりを後押ししますをキャッチフレーズに、「年収の壁・支援強化パッケージ」が発表され、10月から取り組みが開始されました。
その中の、『◆事業主の証明による被扶養者認定の円滑化』が、年収130万円の壁への施策となっています。

この施策によって、一時的な収入増で年収が130万円を超えても扶養内として認められるようになります。
(被扶養者が障がい者や60歳以上である場合は、社会保険加入義務が発生する年間収入の要件は180万円未満になります。)
また2025年10月からは、19歳以上23歳未満の方(配偶者を除く)の基準額が150万円未満に引き上げられました。
大学生のお子さんがアルバイトをしているご家庭は、こちらの金額で見ることになります。
| どんな人か | いくらまで扶養に入れる? |
|---|---|
| 一般的な場合 | 130万円未満 |
| 19歳以上23歳未満(配偶者を除く) | 150万円未満 |
| 60歳以上、または一定の障害がある方 | 180万円未満 |
一時的な収入の変動であることが条件
年収が130万円を超えても扶養内と認められる一時的な収入の変動とは
例えば・・・
• 職場の繁忙期で、残業や出勤回数が増えた
• ほかの従業員の退職や休職によって、業務量が一時的に増加した
• 業務が繁忙期や受注量の増加で、企業全体の業務量が増加した
• 突発的な業務の発生で、業務量が増加した など
このような場合は一時的な収入の変動に該当する可能性があります。
要するに、一時的であったと証明ができれば問題ありません。
ただし、130万円を超えても扶養内として認められるのは、連続2回までです。
そして、時給が上がった、手当が増えたなど、恒常的に給与が上がる見込みの場合は認められません。
あくまでも、一時的であることが条件となります。
何度も出てきますが、一時的な収入の変動でなくてはいけません。
賃金のベースアップ等で毎月のお給料が増えて130万円を超えてしまう場合は対象とならないので注意しましょう。
130万円を超えた場合、上限は・・・?
「一時的なら超えてもいい」と言われても、どこまで許されるのか気になりますよね。
130万円を超えた場合の具体的な上限額については決まっていません。
ただし、以下の場合、被扶養者の認定が削除されると記載されていたので注意が必要です。
• 被扶養者が被保険者と同一世帯に属している場合に、被扶養者の年間収入が被保険者の年間収入を上回る場合
• 被扶養者が被保険者と同一世帯に属していない場合に、被扶養者の年間収入が被保険者からの援助による収入額を上回る場合
特定の事業主と雇用関係がない従業員は対象外
今回の措置(事業主の証明による被扶養者認定の円滑化)の対象者は、以下に当てはまる人です。
・国民年金の第3号被保険者となる配偶者
・社会保険の被扶養者である学生アルバイト
・新たに被扶養者としての認定を受ける従業員
・シフト制勤務の従業員
(一定期間ごとの勤務予定によって労働時間などが確定する勤務形態)
フリーランスや自営業者など、特定の事業主と雇用関係がない従業員は対象外となります。
だんだんと厳しくなっていく被扶養者認定の条件

社会保険に加入する対象は、年々広がっています。
2025年6月13日に年金制度改正法が成立し、この先の予定もはっきりしました。
まず賃金要件(月8.8万円以上、いわゆる「106万円の壁」)が撤廃される予定です。
全国の最低賃金が上がったため、週20時間以上働けば自動的にこの金額を超えるようになったからです。
そして企業規模の要件も、段階的になくなっていきます。
・現在 従業員51人以上の企業(2027年9月まで)
・2027年10月 従業員36〜50人の企業
・2029年10月 従業員21〜35人の企業
・2032年10月 従業員11〜20人の企業
・2035年10月 従業員10人以下の企業
最終的には週20時間以上働けば、勤め先の規模に関係なく社会保険に加入することになります。
「106万円の壁」が「週20時間の壁」に置き換わっていく、というイメージですね。
小さなクリニックで働いているから大丈夫、という時代ではなくなっていきそうです。
今のうちに、これからの働き方を考えておきたいですね。
まとめ
厚生労働省の「年収130万円の壁」への対応は、繁忙期に労働時間を延ばすなどで収入が一時的に上がっても、事業主がその旨を証明すれば、引き続き扶養に入り続けられるという仕組みです。
当初は期限つきの措置でしたが、その後恒久的な制度として続くことが決まりました。
使える条件はありますが、知っておけば働き方の選択肢が広がります。
使えるときは、しっかり活用したいですね。
配偶者の社会保険の扶養範囲内で働くと、社会保険料や国民年金保険料を支払う必要がありません。
メリットは支出を抑えられることですが、配偶者の扶養に入ったまま働いた場合、厚生年金に加入しないため年金が増えることはありません。
今は出費を抑えられますが、長い目で見ると損になるかもしれません。
将来を見据え、老後の生活資金のことも意識しつつ、働き方を考えて行く必要がありますね。
できることを少しずつ準備していきましょう。



最後に、いま扶養内で働いている方に伝えたいことがあります。
まずは自分の労働条件通知書を見て、契約上の年収を計算してみてください。
シフト制などで契約がはっきりしない場合は、職場に聞いてみるといいと思います。
そして「超えそうかも」と思ったら、早めに配偶者の勤務先に確認してもらうこと。
これが本当に大事です。
私の場合は、この確認でずいぶん遠回りをしました。
実際に事業主の証明を出して認定されるまでに、どんなやり取りがあったのか。
その一部始終は体験談にまとめていますので、同じ立場の方の参考になればうれしいです。
ーりとしんくー

