ここ数年、50歳以上の患者における帯状疱疹(Herpes Zoster)の発症率が上昇していると感じる場面が増えていませんか?
加齢や基礎疾患、ストレスなどが免疫機能に影響を与える中、予防接種の重要性が改めて注目されています。
「あれ…この痛み、なんだかおかしい」
そんな違和感から始まるのが、帯状疱疹。
この記事では、臨床で役立つ帯状疱疹のポイントを、ちょっとやわらかめにまとめてみました。
本記事では、臨床での観察や報告を踏まえつつ、以下の点について整理します。
- 発症のメカニズムとリスク因子
- 臨床経過と合併症の留意点
- ワクチンの種類と効果
- 公費助成制度と啓発のポイント
📝「帯状疱疹ってどんな病気?」という一般の方向けには、以下の記事でやさしく解説しています。
→ 50代から増える帯状疱疹|症状・原因・予防をやさしく解説
なぜ増えてる?帯状疱疹の背景を確認
帯状疱疹は、水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV: varicella-zoster virus)の再活性化によって発症します。日本皮膚科学会では、80歳までに3人に1人が罹患するというデータも。
主なリスク因子は
・加齢(免疫の“老化”)
・ストレス、睡眠不足、栄養の偏り
・糖尿病などの基礎疾患
・抗がん剤・ステロイドなどの治療中
また、間接的な影響として、2014年から始まった子どもへの水痘ワクチン定期接種の導入により、子どもが水ぼうそうに自然感染することが少なくなったことがあります。
これにより、成人が水ぼうそうに感染した子どもからブースター効果を得る機会が減少しました。
これが、50代以上に帯状疱疹が増えている背景と言えます。
症状の特徴は?「なんか変」な痛みが始まりのサイン
帯状疱疹の初期は、**「神経痛っぽい痛み」**がヒント。
「発疹はまだ出てないのに、ピリピリ痛む…」という声、多いです。
典型的な流れはこんな感じ
典型的な症状は以下の通りです:
- 皮膚症状:違和感・感覚の鈍さ・痛み(数日前から)
- 前駆症状:片側に赤み〜小さな水ぶくれ(帯状に広がる)
- 経過:2〜3週間でかさぶた化→治癒へ
でも油断禁物なのが、そのあと…。
帯状疱疹後神経痛(PHN)とは?
皮膚が治っても痛みが続く…それが帯状疱疹後神経痛(PHN)です。
神経障害性疼痛が数カ月~年単位で残存することがあり、特に60歳以上ではリスクが高いです。
発生率は、50代で約20%、70歳以上で30%以上と言われています。
「夜も眠れない」「服が擦れるだけで激痛!」など、生活の質に大きく影響します。
重症化リスクと合併症:どこに気をつける?
免疫機能が低下している高齢者や基礎疾患がある人は、帯状疱疹が重症化しやすく、長期入院のリスクも高まります。
そのため、初期診断と適切な治療導入が重要となってきます。
こんな合併症に注意:
・目に出たら要注意(HZO)→視力障害、角膜炎、結膜炎など
・耳に出たら要注意(ラムゼイ・ハント)→顔面神経麻痺・難聴
・脳炎・髄膜炎:免疫抑制のある人でまれに
とくに顔面・頭部に出てきたら、眼科や耳鼻科との連携も重要です。
感染対策:どこまで必要?
帯状疱疹は空気感染はしないため、通常は接触感染対策でOKです。
ただし、水疱内にVZVが含まれているため、免疫不全者・水痘未感染者(特に妊婦や乳幼児)への配慮が必要です。
感染対策として
・発疹部はしっかり覆う
・手洗い・物品共有の注意
・妊婦さんや乳児の近くでは要配慮
医療者として、患者さんやご家族にも分かりやすく説明してあげたいですね。
治療:早期スタートがカギ!
抗ウイルス薬
- アシクロビル(点滴または経口)
- バラシクロビル、ファムシクロビル(経口)
発症から72時間以内にスタートするのが理想。
痛みやPHNの予防にもつながります。
鎮痛薬の選択肢
- NSAIDs、アセトアミノフェン←軽度の疼痛
- プレガバリン、ガバペンチン←神経障害性疼痛に対して
- 神経ブロック、三叉神経節ブロックなども検討←難治性の場合
ワクチン、どう勧める?迷わないためのポイント
帯状疱疹ワクチンの種類
現在、日本で認可されている帯状疱疹ワクチンは以下の2種です
種類 | 生ワクチン (乾燥弱毒性) | 不活化ワクチン (シングリックス) |
---|---|---|
接種回数 | 1回 | 2回(2か月間隔で接種) |
予防効果 | 約60% | 90%以上 |
効果持続期間 | 5年程度 | 9年以上 |
副反応の頻度 | 少なめ | 発熱や筋肉痛などやや強め |
公費補助 | 自治体により実施 | 自治体により実施(多くは高齢者対象) |
- シングリックス推奨対象:免疫抑制治療中、基礎疾患あり、PHNの重症化リスクが高い方
- 個別接種:医師の判断・インフォームドコンセントのもと、症例ごとに選択
2025年からの定期接種スケジュール(ざっくり)
接種対象者は
・2025年度に65歳になる方
・60〜64歳で特定の免疫低下状態にある方
・2025〜2029年度に70・75・80・85…100歳になる方も順次対象(経過措置)
・一部自治体では50代でも助成あり
現場での“声かけ”のコツ
・「最近ちょっと疲れてて…」という患者さんには、予防接種の話題を
・65歳の親世代には「今がチャンス!」と背中を押す
・もちろん、私たち自身も予防接種の対象です!
まとめ:気づく看護、つなぐ看護
帯状疱疹は、見逃すと後がつらい・・・。
PHNは患者の慢性的な痛みやうつ症状につながるケースもあります。
だからこそ、早期発見&予防がいちばんのケア。
- いつもと違う“痛み”に気づくこと=初期症状の発見
- 不安な患者さんに、やさしく説明できること=予防教育
- ワクチンの選択肢を知っておくこと=知識と情報提供
帯状疱疹は早期診断・迅速治療・予防接種の普及がとても重要です。
患者さんの「痛み」を緩和し、「生活の質(QOL)」を守るために、今日からできる一歩を大切にしたいですね。
これらの視点を意識して、臨床現場でのケアに役立てていきましょう。
今回は、50代以上で増加している帯状疱疹についてお伝えしました。
『増えている帯状疱疹|看護師が押さえておきたいポイントと患者ケア』はいかがだったでしょうか?
皮膚の観察から始まる“気づき”、そして予防接種の声かけなど、
看護師としての関わりが、患者さんのその後の暮らしを大きく左右することもあります。
そしてそれは、患者さんだけでなく、
家族や大切な人のQOLを守ることにもつながっていくはずです。
また現場に役立つ情報をお届けしていきますね。
読んでいただき、ありがとうございました!
ーときどきナースのりとしんくでしたー